注文住宅を検討している方で、勾配天井を採用するかについてお悩みではないでしょうか。
勾配天井の画像は、どれもおしゃれなお部屋の写真でかっこいい印象がありますが、採用して後悔している方もいらっしゃるようです。
また、設計者や住宅会社の方から提案されて、よくわからずに採用してしまったが必要なかった、などという場合もあります。
勾配天井はデメリットもありますが、それでも多くの注文住宅で採用されています。
注文住宅で後悔しないために、勾配天井のデメリットと採用される理由をご紹介します。
イメージだけで勾配天井を選び、後悔する人も
勾配天井(こうばいてんじょう)とは、床と水平ではなく、斜めになっている天井をいいます。傾斜天井(けいしゃてんじょう)と呼ばれることもあります。
勾配天井は、2階建ての2階部分、あるいは、平屋の1階部分、のような、屋根の下にあたるお部屋に利用されます。
勾配天井の傾斜角度の多くは、屋根の勾配に合わせた傾きとなっています。
勾配天井を用いたお部屋は、注文住宅の住宅雑誌や住宅会社のwebサイトで事例として紹介されることも多くなっています。
ですが、勾配天井を採用した注文住宅を建てて、住み始めてからイメージと違ったり、生活上の不具合を感じたりして後悔している方もいます。
それは、勾配天井にはメリットだけでなくデメリットもあるからです。
勾配天井を採用するための費用も、一般的には内装仕上の面積増加や手間がかかる分、わずかですが高くなる傾向にあります。
追加の費用をかけて勾配天井を採用したにもかかわらず後悔しないように、デメリットをよく理解するとともに、選んだ理由をしっかりと意識することが重要です。
勾配天井で後悔しがちな4つのデメリット
暑さ寒さを感じやすい
勾配天井にする場合、お部屋の天井高さが部分的に高くなります。
天井が高くなると、お部屋の上下に空気の温度差を生じやすくなります。
特に冬場には、暖かい空気が高い方へ上りますので、床付近は少し寒くなってしまいます。
また、天井を一部でも高くすることでお部屋の容積が増えます。
そのため、エアコンで冷房や暖房するとき、室温を冷やしたり温めたりしなければならない空気の量が増えてしまいます。多くの風量で循環させないと、室内に温度差を生じやすくなるのです。
勾配天井を採用するときは、夏や冬でも家全体の温度があまり変わらないように、断熱性や気密性といった住宅性能を上げる必要があるのです。
お掃除やメンテナンスが大変
勾配天井では、一部の天井がかなり高い位置にあり、その周辺の照明器具や窓は非常にお掃除がしにくくなります。
さらに、構造的に梁が出てくることもあり、梁の上に埃がたまりやすくなることもあります。
埃がたまったままにしてしまうと、窓を開けて風が流れたときに埃も落ちてきたり、埃やダニによる健康への影響も考えられます。
また、高い位置の照明器具が故障や球切れしたときに、自分では交換できず、電気屋さんにお願いしなければならず、工事費用が発生するケースもありました。
最近では照明がLEDになったため、ほとんどなくなりましたが、LEDもいつかは切れてしまいますので、リフォームなどに合わせて照明器具も交換を行う必要があります。
落ち着かない
そもそも、天井が高いと落ち着かない、と感じる方もいます。
高い天井や吹き抜けが住宅で多く採用されるようになってきたのは最近のことですから、一般的なマンションやアパートで勾配天井はほとんどありません。
注文住宅で勾配天井を初めて体験したとき、苦手だったと気づくこともあります。
また、苦手ではない方でも、天井高さが高くなるほど落ち着かなるものです。
ある程度影響のない高さを経験的に知っている設計の方でないと、寝室のような空間は後悔することも多くなってしまいます。
天井が低すぎて居住スペースが狭くなる
部屋数や収納スペースを確保するために勾配天井とした場合、天井の低い箇所が居住スペースとして利用しにくく、動きが制限されることがあります。
十分に利用方法やインテリアを検討しないと、使いにくい勾配天井の部屋が出来てしまい、後悔することになります。
勾配天井を採用する3つの理由
居住スペースを広く確保できる
都市部の住宅密集地では、高さや建蔽率などの土地に対する建築の制限により、建築主が希望する大きさの住宅が建てられないことがあります。
2階部分を勾配天井すると、建物の高さを低く抑えることができます。
高さ制限が厳しい土地でも3階建てにできる場合もあり、限られた土地を有効に利用できます。
勾配天井で天井の低い部分を収納などに利用し、天井の高い部分を生活空間にする、といった設計の工夫により窮屈な印象を与えないようにすることは可能です。
敷地に余裕がなく、大きな家が建てられそういないときは、勾配天井も検討してはいかがでしょうか。
開放感を得られる
勾配天井のある部屋は、天井が高くなるため、開放感を得ることができます。
それほど大きくないお部屋でも、縦に広い空間が広がっていることで、お部屋の狭さを感じにくくなります。
一般的な吹き抜けと同様の効果ですが、吹き抜けのように上層階の床面積を減らすことがなく、構造的な補強も少なくて済むため、開放感を得るという意味では勾配天井の方がデメリットは少ないでしょう。
日当たりが良くなりお部屋が明るくなる
勾配天井により天井高さを高くすることで、外壁に窓を設置できる面積が増えるので、日当たりが良くなり、お部屋が明るくなります。
単純に窓が増えるだけでなく、高い位置から光を取り込むことができるので、冬場に隣家で陰になるような場合でも、太陽光が遮られにくくなります。
また、勾配天井に向けて窓から入る自然光を当てるようにすると、部屋の奥まで自然光の明るさが得られます。
さらに、勾配天井は屋根面に接しているため、天窓を設けることもできます。
天窓は、高い位置にある窓よりもさらに安定して光を取り込めます。
天窓からは空も見えるため、開放感がさらに増す、という効果も期待できます。
勾配天井のお部屋を効果的に使う工夫
家具の配置を見直す
居住スペースが勾配天井により狭く感じている方は、家具の配置を見直してみましょう。
天井高さが低い方へ家具を寄せたり、ベッドを置くことで、天井の高い方を動線とすると、お部屋を有効に利用できます。
シーリングファンを設置する
吹き抜けへ勾配天井で、エアコンの利きが悪かったり、寒さを感じたりする方は、シーリングファンの設置を検討してはいかがでしょうか。
最近では、勾配天井の傾斜角度に対応できるシーリングファンもあります。
お部屋に合ったデザインのシーリングファンにより空気を循環させることで、温度差を緩和し、冷暖房費用を節約できる場合もあります。
断熱性能を上げる
リフォームが必要になりますが、住宅やお部屋自体の断熱性能を向上させることで、外気温の影響を抑えられ、温度差を感じにくいお部屋になります。
効果の高い窓のリフォームなど、リフォーム箇所を絞ることで費用も抑えることが出来ますので、寒さを感じる方は検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
おしゃれなイメージのある勾配天井には、暑さ寒さを感じやすかったり、お掃除やメンテナンスが大変、といったデメリットがあります。
しかし、設計次第で居住スペースを広く確保でき、さらに吹き抜けのように床面積を減少させることなく、開放感を得られ、日当たりを良くできます。
注文住宅を設計中の方は、勾配天井を提案されたときには、しっかりとその設計の意図や理由を聞いてから採用するようにしましょう。