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丸谷博男の連載コラム「光のエッセイ」03 北欧の光り ~アルヴァ・アールトの建築から~

建築家・丸谷博男さんによる連載コラム「光のエッセイ」。様々な視点、切り口で光とは何かを紐解いていきます。

第三弾のテーマは、「北欧の光り ~アルヴァ・アールトの建築から~」です。


北欧の照明器具とその空間は素晴らしい・・・これは多くの人が一致できる意見です。そして、さらに建築を探訪してみると自然光の取り入れ方に驚かされます。

フィンランドを代表する巨匠建築家アルバー・アールト(1898~1976)の世界を見てみましょう。


パイミオのサナトリウム(1933)

アールトが設計事務所を設立して間もなく1928年におこなわれたコンペで優勝し、世界的にもモダニズムの作品として大きく評価されたのがパイミオのサナトリウムでした。30才の時に始まった設計にも関わらず、人間主体のディテールにあふれていました。一例として療養室をご覧下さい。窓際の光りの取り入れ方に大きな特徴があります。

アールト パイミオのサナトリウム断面

図1 パイミオのサナトリウム 夏至の太陽光の入射


マイレア邸(1938)の玄関

マイレア邸の玄関には大きなキャノピー(玄関庇)が魅力的な形で付属しています。

アールト マイレア邸玄関庇

一つ驚くことがあります。それはこれほど奥深いのに薄暗くないのです。断面をよく見ると一番奥の建物際では、屋根面が二段に構成されていて、空の光りが奥を照らすようにしてあるのです。


旧セイナツァロ役場(1952)の階段

役場の議事堂へ向かう階段室です。

ハイサイドライトと格子天井、そして人口照明がそれぞれの役割を果たしています。一歩一歩階段を登りながら、先へ先へと期待が膨らんで行きます。


 フィンランド国民年金協会(1956)のトップライト

全体としては、大きなオフィスビルです。その中に、執務スペースとしての大空間があります。この部屋は外部に面さないため大きなトップライトを設けています。

アールト フィンランド国民年金協会執務室

一番魅力的なのは図書室です。一段下がった閲覧室は落ち着いた空間となり、しみじみとした外光がトップライトから入ってきます。

アールト フィンランド国民年金協会図書館


ユバスキュラ教育大学(1953~57)

大変大きなキャンパスですが、そのなかでも学生食堂の大きなハイサイドライトは空からの光りがあふれるように入ってきます。その光りは天井板に当たり、反射光となって注いでいます。反対側の窓からは緑濃い中庭を見ることができます。夏は緑の光り、冬は雪の反射光が室内を照らしています。

アールトユバスキュラ大学学生食堂全景

学生食堂全景

アールトユバスキュラ大学学生食堂ハイサイドライト

ハイサイドライト


文化の家(1958)の大ホール

音響の良さが評判となっている「文化の家」のコンサートホールは、外光が間接光として客席を照らし、幽玄な空間をつくり出しています。巨大な反射装置・照明装置です。

アールト文化の家大ホール全景

アールト文化の家ハイサイドライト詳細


アールト大学オタニエミ講堂(1964)

アールト大学のキャンパスの中でもシンボル的な建築となっている本部棟の中の講堂です。文化の家のコンサートホールよりもさらに大胆に自然光を取り入れています。機能から言っても、外光を存分に取り入れても良いのが講義室ですね。

アールト大学オタニエミ講堂

アールト大学オタニエミ講堂トップライト


アールト大学図書館(1969)のハイサイドライト・トップライト

図書館こそ光りあふれる環境が欲しい建築です。ここでは思う存分にアアルトの外光を取り入れる手法が発揮されています。

アールト大学図書館ハイサイド全景

ハイサイドライトは外光を大きな面積で受け取り柔らかい光りにし拡散して閲覧室に提供しています。

また、トップライトは、四角いものと丸いものがあり、これまでのアールトが取組んで来た経験がバランス良く配置されていると実感できます。大きさと深さのバランスです。そして建築空間に与える印象が形態にともなっているのです。

アールト大学図書館四角トップライト全景

アールト大学図書館四角トップライト詳細

アールト大学図書館丸トップライト

アールト大学図書館丸トップライト見上げ


アカデミア書店(1969)のトップライト

ヘルシンキの繁華街にある書店ビルの屋上から大胆に取り入れているトップライトです。書店の空間の中心となり造形的にシンボルとなっているものです。

アールトアカデミア書店トップライト


フィンランドの建築家アルヴァ・アールトの建築から北欧の光りの取り入れ方を探訪してみました。

 とても大胆な設計をしています。しかし、いくら素晴らしいからといって、このまま日本に取り入れると大変なことになります。夏の暑さが我慢できない程になってしまうからです。北緯60°のヘルシンキでは南中時の太陽高度は夏至で54°、北緯35°の東京では夏至で78°冬至で23.5°となり、大変大きな違いがあるのです。やはり、地球の上では、それぞれの地域ごとに暮らし方も自然光との付き合い方も大きく異なるということなのです。日本では広縁や縁側の空間や、障子という間接光を生み出す建具、あるいは夏障子(簾を建具にしたもの)が、夏蒸し暑く冬乾燥して寒い環境のなかで生み出されて来た知恵だと思います。



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丸谷博男


丸谷博男 プロフィール 

1948年9月山梨県に生まれる。東京育ち。東京都世田谷区在住。東京芸術大学美術学部建築科・大学院卒業、同大学非常勤講師を約40年務める。一級建築士事務所(株)エーアンドエー・セントラル代表、一般社団法人エコハウス研究会代表理事。2017年4月より、建築マイスター専門学校・ICSカレッジオブアーツの専任教授/学長として赴任。

東京芸術大学美術学部建築科奥村研究室にて設計・デザイン・エアコンディションニング術を学ぶ。 また、1970年代より奧村昭雄のもとで環境共生、OMソーラー、地熱の利用などに取り組み、現在もこの分野では先進を行き、医療福祉施設・環境共生住宅づくりにも取り組む。 2013年エコハウス研究会を立ち上げ、全国各地で住宅講座を開き、家づくりの技術と人材の育成に努めている。「エコハウス研究会world club」を2013.1開設、現在会員約4000人。日本の住まいの伝統の知恵を科学的に再評価し、現代住宅の課題に様々な提案をしている。

著書は以下の通り。

・住まいのアイデアスケッチ集 (彰国社)

・家づくりを成功させる本 (彰国社)

・設備から考える住宅の設計(彰国社) 

・実践木造住宅のディテール  (彰国社)                                          

・男と女の建築家が語る家づくりの話(共著、日本工業出版)

・家づくり100の知恵(彰国社)

・イラストによる家づくり成功読本(共著、彰国社)

・そらどまの家(萌文社)                                         

・デンマークのヒュッゲな生活空間(共著、萌文社)

・新そらどまの家(萌文社)

・ZIGZAGHOUSE-箱から住具へ(共著、萌文社)


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