「どこでも光窓」に対する専門家の意見をご紹介するPro's Eye。
今回は、保育園や幼児向けスクールなど、子どものための施設を多く手掛ける建築家・村上佐恵子さん。
住空間を豊かにする自然光の良さについて、光ダクトの活用アイデアも交えながらお話ししていただきました。
村上 佐恵子 プロフィール
ariadesign代表/一級建築士 早稲田大学大学院建築学科卒業。ドムスアカデミーインテリア学科修士課程終了。建築を通してイタリアなどヨーロッパの人々の暮らしや美意識の高さを学ぶ。
現在、子どものための施設や医療施設を女性の目線から手がけるほか、自然光を生かした個人住宅などの設計にも携わっている。主な作品に「TIS 東京インターナショナルスクール」「ポピンズナーサリースクール市ヶ谷」「ルーチェ東京クリニック」など。
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"窓" の概念を超えた、新しい使い方を提案したい。
1.自然光で子供の環境を豊かに
設計では自然光を重視していますが、都心の密集地や既存のビルの中に施設を作る場合、採光が難しい例が少なくないそうです。
「空間が限られている上、法的な基準に沿って窓を設置していくと、共用部のホールなどに外光を取り入れられなくなることもあります。
建物の制約がある中で、子どもが育つ場をいかに豊かにできるかを考えると、離れた壁面からも自然光を導ける、どこでも光窓は画期的ですね」
村上さんがとくに関心を持っているのは、放光部をクリア(透明)タイプにした丸型ダクト。
「青空が見えるのがいいですね。保育園や幼稚園にあれば、空を覗く潜望鏡のようで子どもたちも楽しめそう。外の気温の影響を受けやすい天窓と違って、ダクトを介して自然光だけが届くので、小さいお子さんのいるご家庭や、患者さんの生活の質を高めたい病院などにも向いていると思います」
2.「どこでも光窓」のあるライフスタイルを
建築を学んだイタリアやドイツでは、太陽の光を貴重なものとする文化が根付いているそうです。
「光に対する教育者の意識も高く、イタリアの例ですが、建物の中庭が光の筒のようになっていて、時間によってどこの窓に光が当たるか先生も子どもたちも知っているんです。その光を使って、きらきらしたアート的な作品を作り、映る影で遊んだりしていました。また、ヨーロッパの北のほうでは、少ない日差しを楽しむために、ウィンターガーデンという温室のようなガラス張りのテラスで、植物を育てたり、食事をしたりする習慣もあります」
「光窓」を使うことで、日本でも自然光を積極的に取り入れたライフスタイルがかなえられるのでは、と村上さん。
「日当たり環境がよくないだけでも、人にとってはストレスになります。自然光は気持ちがいいし、空が映ったり、植物を育てられたりすれば、心が安らぎますね。地下に外光を導いてポジティブに活用するなど、今までの〝窓〟の概念を超えた、光窓だからこそできる新しい使い方や表現を提案してみたいです」