太陽光照明とは?
太陽光照明とは、太陽光で照らして明るくすること、という意味ですが、一般的には、太陽光を効率よく利用するために鏡や拡散板、レンズやプリズムといった光制御技術を用いた特殊な照明器具製品の意味で用いられます。
光を取り込むという仕組みから、採光システム、あるいは、採光装置、とも呼ばれます。
人工照明に対応する言葉として用いられることから、概念や仕組みを表すそれらの言葉よりも具体的な製品を指します。
間違えやすいものとして、疑似太陽光照明や人工太陽光照明といわれるものがあります。
これらは太陽光や自然光に近い性質の光を人工的に再現した電気照明器具ですので、原理は全く異なります。
太陽光照明の役割とメリット
太陽光照明の役割は、窓のない部屋や窓があっても光が十分に入らない部屋に、太陽光を含む自然光を取り込んで明るくすることです。
通常、日中の屋外の自然光は、窓を通して得られますが、建物の構造や間取り、あるいは周辺環境によって十分に明るさが得られない部屋ができてしまいます。
この日中の明るさを人工照明を使わずに解決できるのが、太陽光照明です。
太陽光照明は、蛍光灯やLEDランプなどの人工照明と異なり、電気を使わずに室内を明るくできます。
一部、装置を動かすために電気を用いる種類の太陽光照明もありますが、人工照明を使う電力と比べて、ごくわずかです。
また、太陽光に近い性質の光によって気持ちの良い明るさが得られるというメリットがあり、太陽光照明を利用することで室内の光環境の改善や空間のデザイン性向上などの効果が期待されます。
太陽光照明の一般的な構造
太陽光照明として販売されている製品には、それぞれのメーカーごとに特徴や違いがありますが、一般的な構造はほぼ同じです。
基本的には、屋根や屋上などで太陽光を受ける「採光部」、受けた太陽光を明るさが必要なところまで導く「導光部」、室内に光を放つ「放光部」によって構成されています。
太陽光照明を分類する上で、最も重要な個所は「導光部」であり、現在販売されている製品は大きく分けて光ダクト方式と光ファイバー方式の2種類に分類されます。
〇光ダクト方式
光ダクト、あるいは、ライトパイプやライトチューブなどと呼ばれます、内側が鏡のように光を反射する素材でできた管を導光部に用いていることが特徴です。
鏡面による光の反射を繰り返して管と片側から、もう片方まで光を導く構造となっていて、鏡面は通常の姿見などに用いられる鏡よりも高い光の反射率を有している場合がほとんどです。
採光部や放光部も、効率やデザインを別にすれば、通常の天窓のような形状でよく、非常にシンプルな構造になります。
このようなシンプルな構造であるため、太陽光照明の中では安価になります。
デメリットとしては、光ダクトを家の中に設置するために生活スペースが削られてしまうことや、光ダクトが長く複雑な形状になると光量が落ちてしまうことがあげられます。
大きな光を取り込む場合には、より大きな光ダクトを設置しなければならず、また光が必要な個所が採光部から遠い光ダクトが長くなってしまうため、十分に設計してから設置しなければなりません。
〇光ファイバー方式
光ファイバーと呼ばれる細いワイヤーを導光部に用いる製品です。
光ファイバーは、石英などの透明素材で作られていますが、光の性質により光ファイバーに沿って入射した光のほぼすべてが反射されてしまいます。
光ファイバーを用いると、光ダクト方式よりも狭い空間でも導光部を設置できるというメリットがあります。
また、採光部を置く場所は必要になりますが、光ファイバーのため開口工事が非常に小さくて済むため、リフォームへの対応が比較的容易です。
光ファイバーに光を取り込むための採光部は、光を収束させる必要があるため、レンズや凹面鏡などを用いなければならず、さらに太陽光に対して一定の方向を向いていなければならないため、複雑な形状と太陽光追尾のための駆動部が必要になってしまいます。
光ダクト方式と比べると、やや費用的には高価になってしまいます。
〇その他
その他の方式として、太陽光を追尾装置と鏡のみで、導光部を持たないのものもあります。
とはいえ、具体的な製品はまだ十分に知られていないものがほとんどです。
製品化されている太陽光照明
現在、製品化されている太陽光照明をいくつかご紹介します。
光ダクト方式の太陽光照明製品
〇SOLATUBE
アメリカにあるSolatube International, Inc.より、全世界で販売されている太陽光照明「SOLATBE」です。
参照:SOLATUBE(Solatube International, Inc.)ホームページ
「SOLATUBE」は、全世界、特に太陽光の利用が盛んな欧米で多く販売されている太陽光照明です。
「SOLATUBE」の構造は、屋根に設置するドームから太陽光を取り入れ、内側が鏡面の円筒(チューブ)で光を反射させながら光を室内側に導き、室内で光を拡散させる仕組みです。
屋根に設置するドームは、光を制御するための特殊な形状となっていて、夏は少なく、冬に多くの光を取り込む工夫が施されています。
また、チューブ内の光の反射率も99.7%と非常に高く、より効率よく光を室内まで導くことが可能です。
LEDライト付きの製品もあり、夜には人工照明として利用できるようにすることもできます。
〇Sunpipe
イギリスにあるMonodraught Ltd.より販売されている太陽光照明「Sunpipe」です。
参照:Sunpipe (Monodraught Ltd.)ホームページ
構成自体は、「SORATUBE」と同じで、屋根面にドーム状の採光部を設け、円筒状の光ダクトで室内まで光を導き、天井面に器具を取り付けて、照明のように使うことができます。
ドーム部分が多面体の構造になっていて、太陽光をうまく取り込むことができる工夫がされています。
また、天井面に設置する器具で、光の色を変えるバリエーションが多いことが特徴です。
〇VELUX SUN TUNNEL
デンマークに本部を持つVELUX Groupの太陽光照明「VELUX SUN TUNNEL」です。
参照:VELUX SUN TUNNEL (VELUX)ホームページ
VELUXは、天窓(トップライト)メーカーの大手であり全世界で販売されています。日本にも日本ベルックス株式会社があります。
「VELUX SUN TUNNEL」の構造はSOLATUBEやSunpipeと同様ですが、「VELUX SUN TUNNEL」の特徴として、内側が鏡面の円筒がフレキシブルダクトを利用していることです。
フレキシブルダクトは、曲げ角度などを自由に決めることが可能であったり、取り付けが容易であるなどの利点があります。
しかし、曲げ角度が大きくなると、光の損失が大きくなってしまうデメリットもあります。
フレキシブルダクトの延長距離が短かければ影響は小さいので、屋根から部屋までが短い場合には有効です。
光ファイバー方式の太陽光照明製品
〇Himawari(ひまわり)
日本にあるラフォーレエンジニアリング株式会社の太陽光照明「Himawari(ひまわり)」です。
参照:HIMAWARI (ラフォーレエンジニアリング株式会社)ホームページ
「Himawari」は、太陽光を追尾して光を集める集光機を屋根やバルコニーに設置し、光ファイバーで光を導光する太陽光照明で、日本国内で多くの使用実績がある太陽光照明です。
学校や庁舎をはじめ、一般住宅でも多く採用されています。
「Himawari」は、最新の太陽光自動追尾システムを有していて、晴天時であれば朝から夕方まで安定した光量が得られる特徴があります。
また、紫外線や赤外線も構造的にカットされます。
ラフォーレエンジニアリング株式会社は、太陽光採光システム協議会という業界団体に所属していいます。
住宅向けではなく、ビルや学校などの大きな建物を中心とした各社の太陽光採光システムが紹介されていますので、そちらもご参考ください。
オーダー型の太陽光照明「どこでも光窓」
ご紹介した太陽光照明は、採光部の形状や導光部のサイズ、放光部のデザインなどが使いやすいように規格化された製品ですが、鋼鈑商事の光ダクト「どこでも光窓」は、住宅に合わせたオーダー型の太陽光照明です。
「どこでも光窓」は、導光部となる光ダクトを住宅に合わせて形状やサイズを設計し、さらに得られる光の量を事前のシミュレーションによって算出してご提案します。
採光部や放光部は、建築側にお任せとなってしまうため、住宅を建てる際にその部分の予算が別にかかってしまいますが、逆にほぼ全てのメーカー、タイプの窓や天窓を使用できます。
ダクトのサイズも、大きいものは1辺が1m以上も対応でき、多くの光量が必要な部屋から、少ない光量のお部屋まで幅広く対応しています。
サイズに合わせて価格が変わるため、規格化された太陽光照明よりも安く済む場合もあります。
まとめ
太陽光照明という言葉はまだまだ知らない人も多いかと思いますが、実際に取り入れた住宅はどんどん増えています。
日中に暗いお部屋で過ごしている方や昼間でも電気をつけて生活している方は、人工照明をつけるのではなく、こういった特殊な照明機器を検討してみてはいかがでしょうか?
製品価格や取付けの費用、効果などはそれぞれの装置によって異なりますので、まずは資料請求やホームページからのお問い合わせでメーカーに聞いてみましょう。