最近、調湿建材という言葉を見かけるようになりました。
住宅の断熱性能や気密性能を上げることで、より快適な住宅が建てられるようになってきて、さらに快適性を上げるための要素として「調湿」が取り入れられているからです。
今回は、話題の調湿について解説するとともに、調湿建材の種類や使い方、注意点についてご説明します。
調湿建材について
そもそも調湿とは?
調湿(ちょうしつ)とは、空間の湿度を調整することを指します。
湿度が高いときには空気中の水分を減らし、逆に湿度が低いときには水分量を増やすことで、空気中の相対湿度をコントロールします。
住宅においては、おおよそ50~60%になるように設定することが多いようです。
調湿によるメリット
調湿のメリットの一つは、人の健康に良い影響があることです。
夏場においては、湿度が高いと、じめじめとして不快に感じるだけでなく、汗に夜体温調節がうまくできなくなります。
また冬場では、空気が乾燥して湿度が低くなりがちであり、そうすると肌荒れやのどの痛み、あるいは、風邪などにもかかりやすくなります。
調湿を行い、湿度を適切に保つことは、人の健康にとって非常に良い効果があるのです。
もう一つのメリットは、家を長持ちさせられることです。
湿度が高いと、家の中でカビが発生しやすくなります。見た目に悪いだけでなく、人体への悪影響を及ぼす危険性があります。
一方、湿度が低くて乾燥が進むと、フローリングなどの木材が反ってしまう、といった建材の劣化につながります。
さらに、静電気が生じやすくなることにより火災の発生リスクも増大します。
つまり、調湿することで、住宅がより長持ちするようになるのです。
室内を調湿する方法
調湿の方法には、設備で行う方法、インテリアなどで行う方法、壁や床など建材自体に調湿機能を持たせる方法という3つがあります。
設備で行う方法は、除湿機や加湿器といった電気機器を利用して行います。エアコンの除湿機能を使用することでも、湿度を下げられます。
室内が極端に湿度が高い、または、低い場合では換気設備を使用することで屋外と同程度の湿度となりますので、これも設備を使った調湿の一つです。
インテリアなどで行う方法は、湿気とりを置いたり観葉植物を置くなどです。洗濯物や濡れたタオルを部屋に干すといったことでも十分に加湿されます。
乾いた新聞紙を置くことで部分的に湿度を下げるといった方法もあります。
そしてもう一つが、建材で調湿するという方法です。
家を作る木や石、土や紙といった自然素材は空気中の水分を吸放湿するため調湿する機能を有しています。
最近の住宅では工業製品を使うようになったために自然素材が少なくなり、家が調湿するという実感することはなくなってきていました。ですが最近、調湿機能を有する建材が見直されています。
平成19年から調湿する機能を数値として評価する調湿建材の認定制度も始まっています。
住宅を新築したりリフォームしたいと考えている人自身が、調湿建材を簡単に利用できるようになってきているのです。
調湿建材の使用方法
床で調湿する方法
最もシンプルで知られている方法は、フローリングに無垢の木材を使用することです。
無垢の木材は、木目調のプリントされた合板フローリング材と違い、水分を吸放湿できますので調湿効果が期待できます。
畳を敷くことも調湿には有効です。
ですが畳製品でも、撥水機能や抗菌機能を持たせるために表面をコーティングしたものは調湿機能は期待できません。
調湿効果を求める場合は、やや割高になりますが、い草を使用したものを選びましょう。
壁・天井の仕上げで調湿する方法
仕上げとは、壁の表面にくる部材のことで、壁紙や腰壁、塗装などを指します。
調湿効果のある仕上げ材としては、珪藻土や漆喰の塗装が有名です。腰壁に無垢の木材を使うことも有効です。
調湿力は厚みに左右されるため、調湿力が同じ場合、厚塗りした方が調湿力は高くなります。
最近では、高い調湿力のあるタイルなどを壁に貼って仕上げる製品もあります。
壁・天井の下地で調湿する方法
壁や天井の下地とは、壁紙や塗装を平滑に保ち、壁として強度を出す目的で使用されるボード材を指します。主に石膏ボードや木製の合板などが用いられます。
下地材は、強度の関係から9mmまたは12.5mmと比較的厚い製品が使用されます。
下地材に水分を吸放湿できる素材を使うことで、厚みの分だけ、仕上げ材だけの構成よりも高い調湿性能が期待できます。珪藻土などの仕上げと合わせるとより効果的です。
断熱材で調湿する方法
セルロースファイバーやウッドファイバーとった自然素材を利用する断熱材は、調湿機能があることが知られています。
断熱材として使用する場合、約100mm前後の厚みとすることもあり、より水分を吸収するための体積が増大することで調質機能も大きくなります。
下地材を利用する方法と同様に、上に貼る仕上げ材や下地材も通気性能が必要です。
一般的な石膏ボードには、調湿機能はありませんが、通気性能がありますので利用できます。
調湿建材使用時の注意点
構造やその他の建材も合わせて考える!
前記でも説明していますが、下地材や断熱材を用いて調湿する場合には、壁や天井の構成を考える必要があります。
具体例を一つご紹介します。
一般的な壁紙として使用されているビニルクロスという建材があります。汚れにくくお手入れしやすいことや、色や柄に様々なバリエーションがあること、何より非常に安価であることから最も多く使用されている壁仕上げ材です。
ですが、このビニルクロスは通気性や透湿性、吸放湿性がほとんどありません。
ビニルクロス単体で吸放湿することはないだけでなく、下地材や断熱材に調湿性がある建材を使用しても、ビニルクロスが阻害するため、室内への調湿性能を発揮しなくなります。
最近は、ビニルクロスでも調湿性能や透湿性能を付与した製品も出てきています。製品をしっかりと選び、壁や天井の構造に合った建材を選択することが重要です。
調湿機能には限界があることを認識する!
調湿建材も万能ではありません。
壁の一部だけを調質建材にしても、水分を吸放出できる量は限られます。
また、お部屋が大きくなると、お部屋全体を調湿するための能力もお部屋の大きさに応じて必要になります。
さらに、夏場は調湿力を超えた量の水分を吸収してしまうと、それ以上吸湿できなくなります。
逆に冬場は、屋外が乾燥していれば、調湿建材が持っている量以上の水分は放出出来ません。調湿建材には限界があるのです。
まとめ
使いやすい間取りやお部屋の日当たり、高性能な設備やインテリアなどだけでなく、住宅の調湿性能についても考えると、住宅がより居心地良くなるかもしれません。
新築やリフォームで調湿建材を取り入れたからといって、体感できるほどの効果が得られない場合もあります。
ですが、調湿を考えて作った家は、「風邪をひきにくくなった」や「結露しにくくなった」など、気づきにくいけれど良い効果を実感するという話は伺います。
調湿建材だけに頼らず、加湿器やエアコンの除湿機能、植物などのインテリアも合わせて考え、快適な湿度環境にする工夫をしてはいかがでしょうか。